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フラーレン / Fullerenes

 フラーレンは炭素原子が球状の構造を成している化合物の総称で,ダイヤモンドや黒鉛,カーボンナノチューブと同様に炭素の同素体です。フラーレンは,分子性の単一の化学種として単離することが可能な炭素化合物で,C60,C70,C84などが知られています。フラーレンを代表する化合物はC60で,60個の炭素原子が12個の五員環と20個の六員環を構成しており,クロトー,スモーリー,カールらにより発見されました1)。この功績により,クロトー,スモーリー,カールは1996年にノーベル化学賞を受賞しています。一方,フラーレンの発見より以前の1970年,大澤はフラーレンの存在を予想したことで知られています2)。  フラーレンの最も特筆すべき点は,フラーレンが優れた電子受容体であるということにあります。フラーレンはn型半導体の性質を持っており,電子をキャリアとする有機エレクトロニクス材料として幅広く研究されています。ルビジウムやセシウムをドープしたフラーレンは電子をキャリアとする超伝導体となり,30 K以上で超伝導転移を起こすことが報告されています3,4)
 分子性炭素化合物であるフラーレンは,付加反応などの化学修飾により容易に誘導体を合成し,精密な構造解析をすることができます。フラーレンも他のナノカーボン材料と同様,溶解度が低いことが問題点として挙げられますが,これに溶解度の高い官能基を付加させることで,溶液処理が可能な電子材料へ誘導することができます。メタノフラーレンの一種であるフェニルC61酪酸メチルエステル([60]PCBM)やインデンを付加したフラーレン誘導体(ICBA)は,溶液塗布による電子デバイスの作成に有用な有機半導体です5,6)。これらのフラーレン誘導体は,p型共役ポリマーと混合溶解して有機太陽電池(OPV)を作成するのによく使われるn型有機半導体です7)。また,フラーレン誘導体の有機トランジスタ材料としての利用例も報告されています8)。フラーレンは有機アミン(テトラキスジメチルアミノエチレン(TDAE))と電荷移動錯体TDAE-C60を形成し,低温で有機強磁性体になります9)。 PCBMやICBAはフラーレンの外壁を化学修飾したものですが,フラーレンはその内部空間にサイズの小さい元素を導入できることでも知られます。フラーレン生成時にある種の金属元素を加えておくと,内部の中空の骨格内に金属原子を包み込んだフラーレンを合成することができます。これを金属内包フラーレンと呼び,M@C60のように表記することがあります。金属を内包させることで,フラーレンの電子状態10)や化学反応性11)が変化します。一方,有機化学的な手法によってフラーレン骨格に穴を開け,水分子を封入した上で穴を閉じて元のフラーレン骨格を再生し,水内包フラーレンH2O@C60を合成した例もあります12)

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