ホーム > カタログダウンロード・出展情報 > 化学よもやま話 > 化学よもやま話

化学よもやま話

文献管理とソーシャル・ネットワーク

愛知大学 文学部 図書館情報学専攻 教授 時実 象一

1 文献管理ツール Mendeley

 データベースの検索で見つかった文献は,今はほとんどの研究者が PDF で保管していると思います。文献複写で入手した紙の文献も,スキャンして PDF にしてから保管するのが普通です。PDF にすると,保管は簡単ですが,探し出すのはそうはいきません。そこで多くの人が文献管理ツールを使っています。
 文献管理ツールとしては,これまで EndNote や RefWorks が伝統があります。しかし最近,Mendeley というツールが脚光をあびてきました。Mendeley は無料ツールで,誰でも自由に使うことができます。Mendeley はパソコンにインストールして使う Mendeley Desktop と,ネットで使う Mendeley Web があります。ウェブに保管した PDF は同期することができるので,ネットに保管しておけば,会社・学校や自宅など違うパソコンや iPad からも見ることができます。

図1. Mendeley Desktop の画面


図1. Mendeley Desktop の画面

図2. Mendeley Web の画面


図2. Mendeley Web の画面

 文献の登録は,Mendeley Desktop では自分のフォルダから PDF をドラッグ・アンド・ドロップします。すると自動的に PDF から書誌事項を抽出・検索して書誌ファイルを作成してくれます。Mendeley Web では,検索結果の PDF を表示してから,Web Importer というブックマーク・ツールを使って登録します。登録した PDF は自分で決めたカテゴリー別に分類したり,著者名で並び替えたり,もちろん検索もできます。PDF だけでなく,PowerPoint スライドや Word 文書も保管できます。
 Mendeley は海外のツールなので,日本語文献の PDF はうまく扱えなかったのですが,最近無料の「日本語論文 to Mendeley」が登場し,Mendeley Web で簡単に手持ちの PDF を登録できるようになりました(図3)。

図3. 「日本語論文 to Mendeley」

図3. 「日本語論文 to Mendeley」

 自分の論文につける引用文献リストも Mendeley の MS Word Plugin で簡単につくることができます。すでに 1000 誌以上の学術雑誌の引用文献形式が登録されています。

ページトップへ

2 データベースとしての Mendeley

 Mendeley Web には右上に「Papers」という検索ボックスがあります。ここにキーワードを入れると,他のユーザが登録した文献が検索できます(図4)。オープンアクセスの文献には PDF のアイコンがついているので,自分のライブラリにコピーできます。もちろん書誌だけでも登録できます。実はあなたが Mendeley Web に登録した(または Mendeley Desktop から同期した)文献はすべて検索対象となっています。もちろん誰が登録したかは直接知ることはできないとはいえ,企業の研究者の場合は Mendeley Web での登録は気をつけた方がいいでしょう。

図4. Mendeley を


図4. Mendeley を "Chemical Dictionary" というキーワードで検索した結果

ページトップへ

3 ソーシャル・ネットワークとしての Mendeley

 Mendeley はソーシャル・ネットワークでもあります。自分のプロファイルを登録し(図5),同じような研究をしている人とグループを作ることができます。グループの中では情報や文献を共有することができます。

図5. Mendeley に登録した自分のプロファイル


図5. Mendeley に登録した自分のプロファイル

ページトップへ

4 新しい研究環境

 Mendeley を使うと,文献が管理できるだけでなく,グループを通じて研究の仲間を作ることもできます。皆さんも試してみませんか。Mendeley の具体的な使い方については 「Mendeleyの使い方 | 水の中が落ち着く」(http://acguy.info/mendeley)が役に立ちます。なお筆者は日本に 15 人ほどいる Mendeley の Advisor の一人です。

図 6. Mendeley のグループ


図 6. Mendeley のグループ

ページトップへ

バックナンバー

執筆者紹介

時実 象一 (Soichi Tokizane)   愛知大学 文学部 図書館情報学専攻 教授

[ご経歴] 1968年 東京大学大学院理学系研究科化学専門課程(修士課程)修了,1968年 東洋レーヨン株式会社(現 東レ)研究員,1976年 社団法人 化学情報協会(現 化学情報協会),1995年 Chemical Abstract Service(CAS)アジア太平洋地区責任者,その後科学技術振興事業団などを経て2005年 愛知大学文学部教授,現在に至る。国立国会図書館 科学技術関係資料整備審議会委員ほか各種委員。主な著書「インターネット時代の化学文献とデータベースの活用法」化学同人,「SciFinder活用法—賢い化学情報検索のために」サイエンスハウス,「理系のためのインターネット検索術—ホンモノ情報を早くみつける」講談社
[ご専門] 化学情報学,図書館情報学