質量分析法(MS)は分子や原子の質量電荷比(m/z)を測定し,分子量などの情報を得る手法で,有用な分析ツールの一つとして広く利用されています。m/zの測定に際し,まず分析対象物をイオン化する必要があり,そのイオン化法としては電子衝撃イオン化(EI)が最も簡単な方法として知られています。しかしながら,EIはフラグメンテーションを起こしやすく,得られるマススペクトルが複雑になり,その解析が困難となる場合があります。そのため,フラグメンテーションを起こし難いイオン化法,ソフトなイオン化法が開発されています。こうしたソフトなイオン化法としては高速原子衝撃イオン化(FAB),電子スプレーイオン化(ESI),マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)などが挙げられ,無用なフラグメンテーションを起こすことなく質の高いスペクトルが得られます。
今日のプロテオーム解析が発展した要因の一つにこうしたソフトなイオン化の開発などの質量分析技術の進歩が挙げられます。ESI,MALDIなどでのタンパク質イオン化法の確立,飛行時間型質量分析計(TOF-MS)の高精度,高感度,高速化によりタンパク質解析のスピードが大きく向上しました。そして,1993年にペプチドマスフィンガープリンティング法(PMF法)が開発され,迅速なプロテオーム解析が可能になりました。今やMSは化学の分野のみならず,生命科学などの分野においても重要な分析ツールとして利用されています。
一方,生体中の微量生理活性低分子の分析にもMSは用いられています。複雑な生体マトリックス中の生理活性低分子の分析には,HPLCで分離し,MSで定量するLC-MSが多用されています。LC-MSで用いられるイオン化法として,イオン化に際して試料の気化を必要としないFAB,ESIなどが利用されています。中でもESIは最もフラグメンテーションを起こし難く,適用可能な化合物の範囲の広さと高い操作性からLC-MSで最も汎用されるイオン化法です。しかしながら,今日の先端研究において超微量成分の定量が必要とされる分子に対して,高感度といわれているLC-ESI-MSでさえも感度が不足する場合も少なくありません。そうした場合,ESI-MSの検出感度を向上させる目的で,MS用誘導体化試薬が利用されています。こうしたMS用誘導体化試薬は分子内に正電荷あるいは負電荷を安定に存在させるための官能基を有しています。例えば,東らが開発した1-(5-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル)-4-メチルピペラジン(1, PPZ)もそうしたLC-ESI-MS用誘導体化試薬の一つで,ヒドロキシステロイド類の分析に有用です1)。1はエストラジオールのフェノール性水酸基と速やかに反応し,3-O-[2,4-ジニトロ-5-(4-メチルピペラジノ)フェニルエストラジオールを生成します。次いでメチルヨージドを反応させ,アミノ基を四級化することにより,正電荷を有する誘導体が得られます。この誘導体は,LC-ESI-MS測定においてエストラジオール自身と比べ2000倍以上も高い検出感度を示します。東らは,胎児-胎盤系機能の診断に重要となる妊婦血清中のエストロゲンを高い精度で定量しています。
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