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脂質

 脂質は糖質,タンパク質とともに生体を構成する大きな物質群です。本項では脂質関連物質として脂肪の構成成分である脂肪酸およびその誘導体を紹介いたします。脂肪酸はアシルCoAをプライマーとして,マロニルCoA(またはメチルマロニルCoA)の縮合で生合成されます1)。脂肪酸は炭素鎖が4以上のものを指し,特に炭素数が10より長いものを高級脂肪酸と呼びます2)。脂質関連物質を本項では以下のように分類いたしました3)
 

図1 脂質関連物質の分類

 なお,脂質関連物質として分類されることがあるステロイドテルペンは別途項を設けております。
 脂肪酸は主にグリセリンのエステルとして生体内に存在し,トリアシルグリセロールは脂肪組織でエネルギーの貯蔵体です。生体内では炭素数の異なるアシル基が結合した混合物として存在しており,多くの場合純物質として単離することは困難です。また,コレステロールとのエステルの形でも生体内に存在し,生体膜の主要な構成成分の一つです。膜の柔軟性をあげる働きがあります。
 遊離脂肪酸には0.1mMのオーダーから細胞の増殖を抑制する作用が知られており,細胞へ添加する場合には注意が必要です4)
■保存
 オレイン酸のような分子内に二重結合をもつ不飽和脂肪酸は,空気酸化を受けやすく過酸化物を生成することが知られています。やむを得ず,不飽和脂肪酸およびその誘導体を開封後保存される場合には,窒素,アルゴンなどの不活性ガスを封入し,冷蔵・冷凍にて保存してください。二重結合の数が多くなるにつれて酸素の影響を受けやすくなります。
■誘導体
 脂肪酸メチルエステルは脂肪酸誘導体として分析化学で汎用されています。遊離脂肪酸と比べ極性を下げることができ,有機溶媒での取り扱いが簡便になります。また,TLC, GC, LCでテーリングを抑えて分析できます。
 脂肪酸エチルエステルはメチルエステルに比べ,分析に用いられることはまれですが,メタノールより毒性の低いエタノールを用いて脂肪酸から調製できるメリットがあります。例えば,高脂血症薬として用いられているイコサペンタエン酸(EPA)はエチルエステルとして供給されています。低級~中級脂肪酸のエチルエステルは香料としても用いられます。
 脂肪酸ナトリウム塩は脂質のけん化生成物として得られます。石けんの成分として日常生活で広く使われています。両親媒性で界面活性作用があります。
■分析
 脂肪酸を分析するには主にガスクロマトグラフィー(GC)が用いられます。脂肪酸そのものは,一般に用いられる電子衝撃イオン化法(EI)では気化しにくいため検出が困難です。そこで,メチルエステルに誘導して検出します。検出器に質量分析計を用いるGC-MS法を用いると脂肪酸を容易に同定することができます。
 遊離脂肪酸のメチル化法としてはメタノール溶媒中,三フッ化ホウ素・エーテル錯体を作用させる方法,トリメチルシリルジアゾメタンを作用させるなどがあります5)
 また,グリセリドなどの脂質の脂肪酸組成の分析にはトリメチルスルホニウムヒドロキシドや3-(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(m-TFPTAH)のメタノール溶液を用いるGCオンカラム法が簡便な方法として知られています5)。いずれも,プロトコールは「GC前処理試薬」ならびに弊社パンフレット「GC前処理試薬」をご覧ください。
■溶解度
 一般に,脂肪酸は炭素数が多くなるにつれ,水への溶解性が減少していきます。エステル,グリセリドでは水に不溶です。エタノール,クロロホルム,ジエチルエーテルに溶解します。生体内での作用を検討される場合にはジメチルスルホキシド溶液として緩衝液に添加します。このとき溶質の濃度が高くなると,懸濁した状態になるのでご注意ください。事前に至適濃度と添加量を決定されることをおすすめいたします。脂肪酸ナトリウム塩は遊離脂肪酸に比べて水溶性が向上しています。高級脂肪酸塩ではミセルを形成しやすくなります。

参考文献

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