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テルペン

 テルペンは植物の精油に含まれる成分として知られており,その化学構造は炭素数5のイソプレンを単位とした天然物の一群です。メバロン酸経路で生合成され,イソペンテニルピロりん酸がhead-to-tailで結合したタイプの化合物です1,2)。炭素鎖の長さに応じて以下のように分類されます:

表1. テルペンの炭素数と代表的化合物
名称炭素数
ヘミテルペン5イソプレン
モノテルペン10メントール・ゲラニオール : 香料・食品添加物
セスキテルペン15アルテミシニン : 抗マラリア薬,α-ビサボロール : 香料・化粧品成分
ジテルペン20パクリタキセル : 抗腫瘍剤,ジベレリン : 植物ホルモン
トリテルペン30ラノステロール : ステロイドの生合成前駆体
 テルペンは海洋生物から植物まで幅広く存在し,抗腫瘍活性など多彩な生理活性を有するものが多く,その作用機序については現在研究が盛んに行われています。また,主として植物に存在することから,植物を用いたメタボローム解析における指標としても使われています。
●命名法
 IUPAC命名法付録に収載されているテルペンの基本骨格は42個あります3)。実際にはこれ以外の慣用的な名称もよく用いられることがあります。慣用名については成書または総説2,4)に紹介されています。
●溶解度
 配糖体を除いて水に不溶です。一般に有機溶媒に可溶です。酸素官能基が増え,極性が高くなってくるとヘキサンのような無極性溶媒には溶けにくくなります。細胞への添加実験の場合にはDMSO溶液で添加するのが一般的です。
●安定性
 一般に以下のような傾向があります:モノテルペンは比較的安定。油状のセスキテルペン,ジテルペンは酸素官能基が増えるにつれ,長期保管には不適です。トリテルペンは固体のものがほとんどで安定性は良好です。
●検出法
 発色団をもたない化合物も多く,順相HPLCでのUV検出は困難な場合があります。代わってRI(示差屈折率)検出器が用いられます。順相の薄層クロマトグラフィーも汎用され,りんモリブデン酸溶液,硫酸セリウム溶液を噴霧して,加熱発色させて検出します。
●取扱い上の注意など(主に天然物からの抽出実験の場合)
・モノテルペン,セスキテルペンは水分が混入したまま減圧下濃縮すると,水蒸気蒸留が起こり,揮発してしまうことがあります。事前に有機溶媒に溶解して,乾燥剤(硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウム)を加えて充分に乾燥してから,適切な気圧と温度下で濃縮を行うとよいでしょう。
・NMR測定では重クロロホルム(CDCl3)と重ベンゼン(C6D6)を溶媒として別々に測定すると,シグナルの分離パターンが変化し,解析しやすくなることがあります。さらに,残存する水の信号が移動するため,重なっていたシグナルが現れてくることがあります。
・CDCl3は保存中にホスゲンを発生する可能性があります。その影響で貴重な試料が分解してしまう恐れがあります。特に,重水素化率の高いCDCl3(99.95% D以上)を用いる場合はこの傾向が高く注意が必要です。貴重な試料の場合,チューブ中に溶液として保管するのではなく,都度試料管からサンプルを回収し濃縮乾固して保存されることをお勧めします。

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