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【ミニコラム】 試薬の変わった使い方: ビタミンB1を用いる有機合成反応 
≪解説≫ 2つのアシロイン縮合

2つのアシロイン縮合

  アシロイン縮合といえば2つのエステルが金属ナトリウム存在下,縮合してアシロインが生成することはよく知られています。かの有名な有機人名反応をまとめた著書 “Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis” においても上記反応がアシロイン縮合として紹介されています。

 そんなアシロイン縮合ですが,StetterらがOrganic Synthesis誌で紹介しているアシロイン縮合1) は少し変わっています。それによると,2つの脂肪族アルデヒドを塩基存在下,チアゾリウム塩で処理することでアシロインを合成しています。論文タイトルもズバリ “Acyloin Condensation by Thiazolium Ion Catalysis: Butyroin” であり,しっかり “アシロイン縮合” と記載されています。

 Stetterらが報告したこのアシロイン縮合,もともとはベンゾイン縮合の改良版ですが,従来のシアン化物イオンやチアミンを触媒とする方法では,ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒドにしか適応できなかったのです。それを脂肪族アルデヒドの縮合に適用させたことで,拡張型ベンゾイン縮合,すなわちアシロイン縮合となりました。縮合させる方法も基質もまったく異なる2つのアシロイン縮合,いずれの方法も生成するのがアシロインなのでアシロイン縮合ということですが,少し紛らわしいですね。そんなアバウトなアシロイン縮合,そのアバウトさを象徴するエピソードがもう1つ隠されています。それはアシロイン縮合そのものです。

 縮合反応といえば,一般には2つの分子がそれぞれ分子の一部を脱離させながら結合し,1つの分子を生み出す形式の反応を指します。例えばカルボン酸とアルコールのエステル化では,水分子が抜けてエステルが生成するので縮合反応になります。ではアシロイン縮合はどうでしょうか?Stetterのアシロイン縮合で考えてみると・・・

 そう。なにも脱離しないのです。あたかも1分子のアルデヒドに,もう1分子のアルデヒドが吸収されたような反応なのです。この時点で縮合反応の定義から外れて,縮合反応失格となっちゃいました。反応の形式でみるとアシロイン縮合は,片方のアルデヒドにもう一方のアルデヒドが付加しているので,付加反応とみた方が自然のような気もします。とするとアシロイン付加でしょうか?もちろんそんなことはなく,アシロイン縮合が正しい名称です。実はこういった反応名と反応形式のギャップ。けっこうあるらしいです。“有機人名反応・間違い探しゲーム” とかにしてみると面白いかもしれませんね。いくつ見つけることができるでしょう?
1) H. Stetter, H. Kuhlmann, Org. Synth. 1984, 62, 170.
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