アザクラウンエーテル / Aza-Crown Ether

　クラウンエーテルは単純な分子構造にもかかわらず環サイズに応じて分子，原子あるいはイオンなどの認識能を有する優れた化合物です。
　近年，クラウンエーテル環にイオン結合性側鎖を導入し，クラウン環と側鎖配位性基の双方からゲスト分子を捕捉できる三次元的なクラウンエーテルの分子設計が活発になっています¹⁾。また，クラウンエーテルを集積，組織化させた超分子系の構築により，新規な機能性材料の開発も行われています^1b)。
　1から構築されるスピロベンゾピランクリプタンド3aは，Ca²⁺イオンを捕捉するとメロシアニン体3bへ異性化し，色および吸収スペクトルの急激な変化が観測されます^2a)。このため，金属イオンの捕捉／放出を光制御すれば，フォトクロミック材料としての用途が期待されます^2b)。

　築部らは2にピリジン側鎖をつけたダブルアームド・クラウンエーテル4を合成し，遷移金属カチオンの優れた輸送能を見いだしました。これは新しいタイプのイオノフォアといえます³⁾。

　今後クラウンエーテルの分子認識能を生かした研究は，有機・無機・物理・分析・高分子化学など，様々な分野でさらに進展するものと期待されます。