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チアカリックスアレーン / Thiacalixarene
No.116(2002/10発行)

カリックスアレーンはクラウンエーテル,シクロデキストリンに続く第3のホスト化合物で,優れたゲスト認識能を有しており,そして,新たな機能の発現を目指して分子修飾が盛んに行われています。そうした修飾カリックスアレーンの一つに架橋部分のメチレンをイオウ原子で置き換えたチアカリックスアレーン1があります。Miyanoら1)がp-置換フェノールとイオウから一段階で1を合成する方法を報告して以来,1に関する研究が多方面で活発に行われています。
例えば,カチオン認識能を利用したものとして金属イオンの液−液抽出が報告されています2)。1はソフトな金属イオンと,スルホニルカリックスアレーン2はハードな金属イオンと,そしてスルフィニルカリックスアレーン3はソフト,ハードの両方の金属イオンと錯体を形成します。ことに3は金属イオンのハード,ソフトの性質に応じてスルホキシドの酸素あるいはイオウのいずれかが配位子として働くユニークなホスト化合物です。
疎水認識能を利用したものとして,水中からの有機ハロゲン化合物の除去が挙げられます。有機ハロゲン化合物を含む水溶液にスルホン化したチアカリックスアレーン4を加え,錯形成させ,これを弱塩基性イオン交換カラムに通過させます。すると有機ハロゲン化合物と錯形成した4は弱塩基性イオン交換樹脂に保持され,有機ハロゲン化合物を含まない水が溶出します3)。
1の水酸基にキラルなアミドを導入したチアカリックスアレーン5が開発されています。5をキャピラリーカラムに被覆してGC用光学活性固定相として用い,アミノ酸,アルコール,アミン誘導体の光学異性体分離が報告されています4)。それによれば,多くの場合,エナンチオマー間の分離度は1.02以上で,十分な分離を示します。
1は架橋部位がイオウ原子で,このイオウ原子の存在により特有のゲスト認識能を示します。また,1は水酸基,架橋部位,ベンゼン環を化学修飾することができ,新たな機能を有するホスト分子の設計,合成が容易に行えます。したがって,1は極めて魅力あるホスト化合物といえます。
文献
- 1)Facile synthesis of p-tert-butylthiacalix[4]arene
- H. Kumagai, M. Hasegawa, S. Miyanari, Y. Sugawa, Y. Sato, T. Hori, S. Ueda, H. Kamiyama, S. Miyano, TetrahedronLett. 1997, 38, 3971.
- 株式会社コスモ総合研究所, コスモ石油株式会社, 特開平9-227553.
- H. Kumagai, M. Hasegawa, S. Miyanari, Y. Sugawa, Y. Sato, T. Hori, S. Ueda, H. Kamiyama, S. Miyano, TetrahedronLett. 1997, 38, 3971.
- 2)Selective oxidation of thiacalix[4]arenes and their coordination ability to metal ions
- 3)Water-soluble host molecule
- 4)Chiral recognition
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