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遠隔位不斉識別試薬 / Highly Potent Chiral Labeling Reagents

 医薬,農薬,液晶を始めとする機能性材料の研究,開発において,光学活性化合物の重要性が高まりつつあり,光学異性体の識別がますます重要な課題となっています。光学異性体識別法としてジアステレオマー誘導体化法が広く用いられており,優れた誘導体化試薬が開発されています。しかしながら,ジアステレオマー誘導体化法において,誘導体化された分子の不斉中心が4結合以上離れていると光学異性体の識別が困難になるという欠点を有していました。
Fig. Configuration model, 1 ester of 10-methyldodecanol.
1a: (1R,2R)-2ACyclo-COO-, 1b: (1S,2S)-2A-Cyclo-COO-.
 近年,大類らはこの欠点を克服した光学活性誘導体化試薬1および2を開発し,その有用性を報告しています。例えば,1は長鎖アルコールと反応し,誘導体化試薬の芳香環とアルコールのメチレン連鎖がゴーシュ配座であるエステル3および4を生成し,光学活性誘導体化試薬の絶対配置に起因して右巻きか左巻きのいずれか一方の螺旋構造を形成します。そして,長鎖アルコールに不斉分岐があれば,エステル34は螺旋の不斉と不斉中心を有することになり,分岐長鎖アルコールがラセミ体であれば,ジアステレオマーを形成します。このジアステレオマーはHPLC,NMRにて識別することができます。

 12ともに水酸基から遠隔位にある不斉を識別することが可能ですが,HPLC分析では,1は水酸基から炭素数11以上の遠隔位にある不斉を,2は10以下の遠隔位にある不斉の識別に効果的です。ことに,1はアントラセン骨格に起因する強い蛍光を有しているため,フェムトモルレベルの定量が可能です。また,これらの試薬は2級水酸基の不斉の識別能も有し,分岐2級アルコールの立体異性体をHPLCで分離することも可能です。

 森らはラセンウジバエの雌から抽出された性フェロモンの合成において中間体,(6S,19S)-6-ヒドロキシ-19-メチルノナイコサデカンの光学純度を1を用いて測定しています。大類らの開発した12は従来不可能であった遠隔位にある不斉の識別を可能とし,天然物の絶対配置の決定,不斉合成による光学純度の決定など多方面での応用が期待されています。

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