ホーム > カタログダウンロード・出展情報 > 季刊誌"TCIメール" > TCIメールバックナンバー一覧 2005年 > ラセミアルコールの速度論的分割

ラセミアルコールの速度論的分割

 近年,石原らは酵素反応の利点を活かしながら種々の欠点を克服した人工小分子酵素の研究を行っています。その成果の一つとしてヒスチジン由来の小分子触媒1を開発し,ラセミアルコールのアシル化による速度論的分割に極めて有効であることを報告しています。例えば,シス-1,2-シクロペンタンジオールの一方の水酸基をN-ピロリジンカルボニルオキシ基に変換したラセミアルコール2のイソ酪酸無水物とのアシル化反応による速度論的分割では,(1R,2S)-3及び(1S,2R)-2がそれぞれ高い光学純度で得ることができます。この時のS値(kfast/kslow)は93と高い値を示します。この反応を-20℃で行うとS値は132まで向上し,(1R,2S)-3の光学純度も97%e.e.まで上昇します。

 また,触媒1は1,2 -シクロアルカンジオールだけでなく,鎖状1,2-ジオール,β-ヒドロキシカルボン酸,2-アミノアルコールなどの基質も効果的に速度論的分割を行うことができます。いずれの反応もラセミアルコールに対しイソ酪酸無水物を0.5当量加えてアシル化反応を行い,50%に近い変換率で行った結果であり,原子効率は極めて高いと言えます。

 分子量1万を優に越すアシル化酵素と比較し,1は分子量660と遥かに小さく,不斉源もヒスチジン由来の不斉炭素原子一つのみです。そして,分子内に触媒活性中心であるイミダゾール塩基と,基質の選択的取り込みに必要なスルホンアミドプロトンを不斉炭素原子を介して有します。これらが総合的に作用し,効果的に速度論的分割を行うことができます。通常,1は5mol%程度の使用で十分であり,1mmolのラセミアルコールの速度論的分割には0.05mmol(33mg)程度で事足ります。

文献

掲載されている情報は,ご覧の「TCIメール」発行当時のものです。ご注文の際には最新情報をご覧ください。
また,地域等によって販売製品が異なります。製品詳細ページが表示されない場合は,販売は行っておりませんのでご了承ください。