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有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料
有機EL素子は環境負荷が小さく,軽量かつフレキシブルな有機材料を用いているため,次世代のディスプレイや照明用光源として注目されています。1987年にTangらは,有機超薄膜の2層構造を採用した有機EL 素子を報告し1),応用可能な素子として注目されるようになりました。その後,安達らにより,発光層を電子輸送層とホール輸送層で挟んだ3層構造の素子や発光層とホール輸送層を兼ねた2層構造の素子が報告されました2,3)。さらに,キャリア注入特性を改善するために,電子注入層やホール注入層を加えた5層構造以上の有機EL素子も開発されてきています。発光層にドーパントを加えることで,RGBの発光色を制御可能で,これらのドーパントを組合せることで,白色の素子を作成することができます4,5)。白色の有機EL素子(WOLED)の応用例として,有機EL照明パネルがあります6)。
透明性,均質性,等方的性質,優れた成形加工性などの特徴を有するアモルファス物質は,有機EL素子向けの材料の有力な候補となります。また,有機EL素子の実用化の観点からは,耐熱性・耐久性に優れる素子の開発が求められます。トリフェニルアミン系(TPD)のホール輸送材料は,耐熱性の高いアモルファス物質が多く知られており7,8),有機EL素子には最も汎用的に用いられています。その他,電子輸送材料であるオキサジアゾール誘導体(PBD)9),発光材料(ホスト材料)であるAlq31),青色発光材料であるジスチリル誘導体10)がアモルファス有機EL材料の基本骨格となっています。
透明性,均質性,等方的性質,優れた成形加工性などの特徴を有するアモルファス物質は,有機EL素子向けの材料の有力な候補となります。また,有機EL素子の実用化の観点からは,耐熱性・耐久性に優れる素子の開発が求められます。トリフェニルアミン系(TPD)のホール輸送材料は,耐熱性の高いアモルファス物質が多く知られており7,8),有機EL素子には最も汎用的に用いられています。その他,電子輸送材料であるオキサジアゾール誘導体(PBD)9),発光材料(ホスト材料)であるAlq31),青色発光材料であるジスチリル誘導体10)がアモルファス有機EL材料の基本骨格となっています。
従来から良く知られている蛍光材料は,優れた高電流密度特性などいくつかの利点を有するものの,75%の三重項励起子は熱失活してしまい,25%の一重項励起子しかEL発光には利用できません。一方,三重項励起状態から発光するりん光材料を用いることで,一重項から三重項への項間交差により,100%のEL量子効率を得ることは可能です。これまでにIr(ppy)3を基本構造とする様々なりん光材料が報告されています11)。貴金属などの重原子を用いない,熱活性型遅延蛍光(TADF)を示す発光材料が近年注目されています。安達らによると,一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さい材料を用いることで,三重項から一重項励起状態への逆エネルギー移動を高効率で可能にし,原理的には蛍光過程であっても25%以上の励起子生成効率を実現することができます12,13)。
参考文献
- 1)C. W. Tang, S. A. VanSlyke, Appl. Phys. Lett. 1987, 51, 913.
- 2)C. Adachi, S. Tokito, T. Tsutsui, S. Saito, Jpn. J. Appl. Phys. 1988, 27, L269.
- 3)C. Adachi, S. Tokito, T. Tsutsui, S. Saito, Jpn. J. Appl. Phys. 1988, 27, L713.
- 4)Review: B. Luessem, M. Riede, K. Leo, Phys. Org. Semicon. (2nd Edition) 2012, 427.
- 5)Review: C. Adachi, T. Oyamada, T. Matsushima, Mol. Electron. Bioelectron. 2007, 18, 25.
- 6)Review: H. Sasabe, J. Kido, J. Mater. Chem. C 2013, 1, 1699.
- 7)Y. Shirota, K. Okumoto, H. Inada, Synth. Met. 2000, 111-112, 387.
- 8)X. Zhou, J. Blochwitz, M. Pfeiffer, A. Nollau, T. Fritz, K. Leo, Adv. Funct. Mater. 2001, 11, 310.
- 9)M. Era, C. Adachi, T. Tsutsui, S. Saito, Chem. Phys. Lett. 1991, 178, 488.
- 10)C. Hosokawa, H. Higashi, H. Nakamura, T. Kusumoto, Appl, Phys. Lett. 1995, 67, 3853.
- 11)C. Adachi, M. A. Baldo, S. R. Forrest, M. E. Thompson, Appl. Phys. Lett. 2000, 77, 904.
- 12)H. Uoyama, K. Goushi, K. Shizu, H. Nomura, C. Adachi, Nature 2012, 492, 234.
- 13)Q. Zhang, B. Li, S. Huang, H. Nomura, H. Tanaka, C. Adachi, Nat. Photonics 2014, 8, 326.