有機半導体には正孔が半導体層中を移動するp型半導体,電子が移動するn型半導体,正孔・電子両方が移動可能なアンビポーラー(両極性)型半導体があります。有機トランジスタに使われる代表的な材料として,低分子p型半導体についてルブレン・ペンタセンなどのアセン類の他,ジナフトチエノチオフェン(DNTT)・ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)のようなヘテロアセン類,オリゴチオフェン,ポルフィリン等が挙げられます。低分子n型半導体としてはペリレンジイミド(PTCDI),テトラシアノキノジメタン(TCNQ),フラーレン類などが挙げられます。高分子を用いた有機トランジスタに関しても数多く報告されており,ポリチオフェンやポリフルオレン,ドナーアクセプター型ポリマーなどが挙げられます。従来,溶液プロセスで作成する素子は真空蒸着で作成する素子に比べ移動度が低く,高移動度と高溶解性は両立しないと考えられてきました。しかし最近は高い移動度を示す可溶性材料が報告されており4-6),溶液プロセスの素子開発も進んでいます7)。有機物ならではの材料開発と作成プロセスの進化により,溶液プロセスで十分な駆動速度を有するデバイスの作成が可能になってきています。
有機半導体の特徴として柔らかさを挙げることができますが,通常の結晶性あるいはアモルファス有機半導体よりも柔らかい液晶性有機半導体も注目されています8,9)。液晶性有機半導体はキャリア移動と液晶の自己組織化能を兼ね備えた優れた材料であり,塗布した基板上で分子が自発的に配向する特徴があります。また,液晶相の柔らかさを活かし,電場などの外部刺激により分子配向を制御できるという利点もあります。