光重合開始剤は光硬化性組成物の一成分として多方面で用いられ、紫外線や電子線などの照射により組成物を重合、高分子化し、溶解性、粘度、接着性をはじめとする物性に変化を与えます。ことに液体から固体に変化する現象は極めて有用で、塗料、印刷インキ、歯科材料、リソグラフィー、フォトレジストなどの表面加工分野に用いられています。そして、その特性の向上を目指して新たな光重合開始剤の開発が盛んに研究されています。
光重合開始剤は、上図のように発生する活性種によって大きく3つのグループに分けることができます。従来から広く用いられている光重合開始剤は、紫外線や電子線などの照射によりラジカルを発生し、そのラジカルが重合のきっかけとなるもので、代表的なものにベンゾイン誘導体があります。紫外線や電子線などの照射を受けてカチオン(酸)を発生する光酸発生剤は1990年代後半から実用に供されるようになり、最近のトピックスとなっています。紫外線や電子線などの照射を受けてアニオン(塩基)を発生する光塩基発生剤は、最近基礎研究が盛んに行われつつある開始剤です。
以上のように3つに大別されますが、いずれのグループでも優れた光重合開始剤の条件として、ラジカル、カチオン、アニオン生成の量子効率が高いこと、吸収ピークと光源の発光波長がマッチングしていること、熱的安定性が高く暗所で安定であること、モノマーやオリゴマーへの溶解性が高いことなどが挙げられます。
参考文献
- 1) 角岡正弘, 化学工業 2001, 497.
- 2) 角岡正弘, 化学工業 1999, 592.
- 3) 山岡亜夫, 日本接着協会誌 1989, 25, 144.